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26歳主婦の趣味ブログ

//映画 5.//1983年米国映画「フラッシュダンス」と1984年英国映画「リトルダンサー」/踊る友人たち

1.本当にとても良い、1984年公開のイギリス映画「リトルダンサー」

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日付を遡ったら、「リトルダンサー」を観たのは2017年の7月だった。

当時大学を卒業する年の夏の長期休みを利用してフレンチ料理を知りたいという理由で、オーベルジュに住み込みで働いていた。

卒論も退屈だったし、時間はいくらでもあるような年頃だった。

21歳の夏の始まり。

 

そのオーベルジュは海のごく近い山間にひっそりと佇む洋館で、広い庭にはドッグランがあった。

周囲には観光客向けの、洋風のレストランや土産屋、蕎麦屋や目立たない美術館があるだけ。

最寄りのコンビニまでも長い坂道をくだって行く必要があり、ちょっとした買い物にはオーナーの車を出してもらわねばならなかった。

 

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女の子たちに混じってバレエのレッスンを受けるビリー

 

私や、他のスタッフの女の子たちの暮らす部屋は屋根裏にあった。

部屋にはベッドが一つと、小さな冷蔵庫とテレビがついていた。エアコンもきちんと効いた。

オーナーは映画が好きで、洋館のプレイルームにも客が自由に観られるようにDVDをいくつか置いていた。

私が映画好きだということを知ると、休み時間にDVDを自由に観てもいいと言った。

勧めてくれた映画の一つが、「リトルダンサー」だった。

私はそのチャーミングな映画を、豊かな自然に囲まれたオーベルジュの屋根裏の自室で鑑賞した。

外では蝉がせわしなく鳴いていた。

 

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1984年、イギリスの炭坑町に住む「リトルダンサー」の主人公、少年ビリーは11歳。他の男の子たちと同じようにボクシングを習っている。ある日、ボクシングの練習場の半分を女の子たちのバレエ教室に貸すことに。ビリーは偶然目にしたバレエ教室に惹かれて、女の子たちに混じって練習するうちにバレエに熱中していく。

彼には才能がある。そして好きこそものの上手なれという言葉を体現しているかのように、練習を重ねるごとに彼のバレエの才能は光を放っていく。

 

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ビリー・エリオット役のジェイミー・ベルの美しい踊りに圧倒されたのを、今でもよく覚えている。

映画を初めて見たあと、「本当にとても良い」と、私はメモで短い感想を残していた。

オーベルジュでの仕事は、宿泊客の朝食の準備からディナーまで続く。そのうえ、オーナーの生まれたばかりの赤ちゃんの世話なんかも空き時間にしていた。

だからなのか。長い感想を綴っているような暇はなかったのかもしれない。

もしくは長い感想を述べられるだけの国語力のようなものを、21歳の女子大学生だった私は持ち合わせていなかったのかもしれない。

今も相当怪しいけれど…。

 

2.1983年公開のアメリカ映画「フラッシュダンス」

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「フラッシュダンス」を観たのはつい最近のことで、見つけるまではタイトルすら知らなかった。

2021年の8月の暑い午後。

ロックダウンは続いていたし、どこに出かけられるわけでもないので暇を持て余していた。

「フラッシュダンス」のタイトルは、Netflixのおすすめ欄に出てきた。

時間はあるし特に観ない理由もないので、朝飲んでいたコーヒーのカップを洗って、新しいものを淹れ直して、さあ観てみよう、ということになった。

 

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アレックス役のジェニファー・ビールズ

 

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「フラッシュダンス」を観たあとで、4年前にオーベルシュの屋根裏部屋で「リトルダンサー」を観たという、頼りない記憶力の尻尾を引っ張ってくることができたのは、ジェニファー・ビールズの圧倒的なダンスに引き込まれたからだろう。

バレエに恋焦がれる気持ちという一筋の光を頼りに踊る彼女のダンスが、ビリーという少年のそれと似ていた。

 

ジェニファー・ビールズ扮するアレックスの躍動から放たれるパワー。

または、画面に映る物語への吸引力。1980年代という時代の色彩。

映画を構成する、その微妙な一つ一つの要素が、私の中にある記憶の断片を呼ぶような感覚があった。

 

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名シーンのひとつ、ダンス中に水をかぶるアレックス

 

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二つの映画を比べると面白い。

「リトルダンサー」は2000年公開だが設定は1984年、「フラッシュダンス」は1983年に公開されている。

「リトルダンサー」はイギリスで作られ、「フラッシュダンス」はアメリカで作られた。

「リトルダンサー」は11歳の少年が主人公で、「フラッシュダンス」は18歳の少女が主人公。

 

「リトルダンサー」の少年ビリーも「フラッシュダンス」の少女アレックスもバレエダンスに惹かれ、憧れを抱いている。

そしてお互いに、ラストシーンでは自身のバレエを圧巻の演技力で披露してくれる。

 

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「フラッシュダンス」のラストシーン

3.踊る友人たち

けれども申し訳ないことに、私はバレエについて語れるほどの知識も経験もない。

ただ一方で幼少期に、私の周りにもわずかだがバレエを習っている友人というのがいた。

 

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一人は小学校に上がる前に出会った友人。

近所の同い年の女の子。

 

私たちはよくお互い家を行き来して遊んでいた。

それで何度かチケットをもらって、彼女が属していたバレエ教室の発表会を彼女を観に行った。

はっきりいえばあまりしっかり覚えていないけれど、お化粧をして、綺麗なバレエ服を着て、くるくると踊る彼女が羨ましくて、私もバレエをやってみたいと親にねだった記憶がある。

彼女は引っ越してしまったけれど、そのあと何年かは手紙のやりとりをした。

今何をしているかは分からない。

私はたぶん6歳か7歳くらいだった。そして彼女が友達として好きだった。

彼女は一人いた姉の影響を受けてか、子供ながらに大人っぽい雰囲気があった。背丈も私より高く、顔立ちもはっきりしていたからかもしれない。

バレエをやっていたことで、バレエ教室での生徒同士の関わり合いのなかでコミュニケーション能力を早期から身につけていたのかもしれない。

バレエのしなやかな動きを身につけていくに従い、実年齢よりも体の成長が早かったのかもしれない。

いずれにせよ、その大人っぽい友人のことはバレエとセットで覚えている。

 

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バレエではないけれど、社交ダンスを習っていた友人もいた。

小学校の高学年で私は、父親の転勤で県を跨いで引っ越をした。転校先の小学校で仲良くなった女の子が、その子だ。

彼女の社交ダンスの発表会にも行ったことがある。

社交ダンスの発表会というのは、コンサートホールで行うのではなくて、ホテルの宴会場のようなところで、それこそ社交パーティのような演出で行われる。

押入れの奥から、あまり着ない紺のワンピースを出してもらって、夕方に母親の運転するイプサムで家を出て夜のパーティが開催される会場に赴いた。

初めての社交的な場だったけれど、彼女の家族が私をテーブルに招いてくれて、一緒に食事をして、最後には彼女のおばあちゃんと一緒に踊りを踊った。

私はステップも分からなかったけれど、手を引かれるままに腰を揺らした。

 

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もう一人は高校時代に知り合った友人で、彼女も小学校に上がる前からバレエを習っていたと言った。

大学入試もあるし、勉強や部活で忙しいからもうバレエ教室は辞めてしまった、と言っていたけれど。

彼女の踊りは見たことがないけれど、姿勢がよくて所作が上品だった。

黒くて長い髪と、同じく黒い睫毛に縁取られたぱっちりとした目がチャーミングな友人だった。

彼女とも気が合って、よく一緒に帰ったり、放課後話し込んだりしていた。

 

最後の黒髪の彼女からは一週間ほど前に、結婚することになった、と連絡があった。

なんだか月日の流れは本当に早い。

当たり前だけれど、私たちはもう女子高校生ではなくなっている。

 

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3人とも何らかの理由で、よく一緒にいる友人たちだった。

年頃の悩みを打ち明けあったりもしたし、離れてからも手紙やLINEで繋がっていた。

 

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4年前に観た「リトルダンサー」とつい最近観た「フラッシュダンス」は、少女時代の記憶をこうして静かに呼んだ。

私のほんのささやかな、映画とバレエの話はこれでおしまい。

それでは、また。