毎日に乾杯しましょう。

26歳主婦の趣味ブログ

//映画 8.//「アイス・ロード」

こんばんは。

プライベートの色々で、記事の執筆からは遠のいてしまってました。

1ヶ月半ほどお休みしたので、また再開します。

 

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ここひと月、時間はあったので週1〜2回のペースで、映画館へ行くことができていました。

それ以外では、Netflixでも何作か。

 

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最近、劇場で観たのは、リーアム・ニーソンの新作、『アイス・ロード』。

 

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レスキュー・エンターテイメント。

 

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あらすじはこんな感じ。

 

爆発事故で、カナダの鉱山に閉じ込められた26人の作業員を救出するために、集められた4人のドライバー。

彼らは救出のため、氷の道「アイスロード」をドライブする。

この氷の道、走るトラックのスピードが速すぎてもその衝撃で割れてしまうし、速度が遅すぎればトラックの重さで氷が割れ、トラックは沈んでしまう。

一方で、鉱山事故の裏側には暗い陰謀が見え隠れする。

 

主人公マイクと、失語症を患う弟のガルディの兄弟愛も描かれ、ストーリーに奥行きをもたらします。

 

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びっくりしたのが、来年70歳を迎えるニーソン氏、なんとほとんどCGを使わずにアクションシーンを撮影したとか。

 

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だからアイス・ロードも本物だし、雪も本物。

ロケ地はカナダのマニトバ州、ウィニペグ湖。

 

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タントゥー役の、アンバー・ミッドサンダーは、まだ24歳なんですね。

1997年生まれ。

 

印象的な黒い瞳が、とてもチャーミングな役柄。

 

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渾身の、みずみずしい演技も見どころでした。

 

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監督・脚本が、『アルマゲドン』を描き上げたジョナサン・ヘンズリー氏と言うことで、私も『アルマゲドン』が好きなので楽しみに劇場へ向かいました。

 

おすすめ度は、★★★☆☆くらいでしょうか。

陰謀の下りがやや執拗ですが、暇な時間、一人で観に行くにはちょうど良い映画でした。

ワクワク&ハラハラ、させてもらいました。

 

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それでは、またです。

 

 

//映画 7.//「ビフォア・サンライズ」/ある一つの親密な夜

こんばんは。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。ブックマークやコメント、大変励みになっております。

1.『マディソン郡の橋』と『ビフォアサンライズ』

 

前の記事で『マディソン郡の橋』を書きましたが、この映画の一つのきもは、

4日間という短い時間で劇的に恋に落ちる、という点ですよね。

 

 

madodonomado.com

 

 

突然ですが私が大好きな映画の一つに『ビフォア・サンライズ』があります。

 

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『マディソン郡の橋』がお好きな方の中には、『ビフォア・サンライズ』も好きという方が少なくないのではないでしょうか。

 

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この二つの映画は、上映されたのはどちらも1995年。

 

また、どちらも短期間で生涯ないと言えるような恋愛をするという点が似ています。

『ビフォア・サンライズ』は、そのタイトルの通り夜明けまでの短い時間で、男女が宿命的に心を通わせ恋に落ちていく様子を描いた映画です。

 

『恋人までの距離(ディスタンス)』という邦題がついてますが、二人の主人公が長距離列車で出会ってから会話を重ねていくうちに、心の距離を近づけていく様子がたまらないですよね。

 

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2.ワインバーで『ビフォアサンライズ』と出会う

さて。

一つの映画は、その他さまざまなものと繋がりを持っているものです。

かなり比喩的な表現だけど。

 

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よく通っていた古酒をメインで提供するワインバーで「年の近いワイン友達を紹介してあげるよ」と、いくつか年上の常連の女性客を紹介してもらったことがあります。

 

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ある日その女性客の方と、そのワインバーで待ち合わせました。

その日は私と彼女だけしかお客はいなくて貸切状態。

そのまま食事をし、ゆっくりと時間を重ね熟成したワインを楽しんでいた時、好きな映画の話になり、そこで彼女も『ビフォアサンライズ』が好きだということを知りました。

私たちの話をきいていた、ワインバーの店主も「自分もその映画が好きだ」というからその話で盛り上がった記憶があります。

 

ワインをずいぶん飲んでいたから、どんな会話をかわしたかまでは定かでないけど、とにかく好きな映画が同じだということで、その空間の一体感が強まりました。

 

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本当にささやかな思い出。

けれど映画は人生のいくつかの曲がり角で、そういったささやかな出会いをもたらします。

 

そのワインバーでの一晩、閉店までの数時間。

私たちの夜も、惜しまれながら更けてきました。

 

3.ある一つの親密な夜

ある一つの親密な夜というのは、時の流れが凝縮されているように感じます。

意外と、その最中はそう思わないものです。

けれどある時を過ぎると私たちは、懐かしみながらその記憶の断片を眺めるのです。

 

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もちろん、『ビフォアサンライズ』のその後の2作も大好きですがやっぱり1作目がすごくいいですよね。個人的には。

 

明日から三連休ですね。

季節の変わり目、体調に気をつけ良い休日をお過ごしください。

 

それでは、また。

//映画 6.//1967年の「卒業」/書くことについても

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「卒業」の主人公ベンジャミン役のダスティ・ホフマン

1.書くことについて

こんばんは。

雨が降るごとに、秋が深まっていくようです。

 

さて、ここまで結構しっかり映画の感想やそれにまつわる思い出など綴ってきたので、今日は少しカジュアルに映画の日記をつけます。

 

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ブログというか物を書くことに慣れてないのか、どうも肩に力が入ってしまいます。

ひとつの記事もどんどん長くなっていって、自分でも収集がつかなくなります…。笑

 

中学校くらいまでは作文や読書感想文は得意で、国語も好きでしたが…歳を重ねるにつれて、自分の文章をまとめて書くような機会が減っていくように感じますね。

 

企業で営業職で働いていたときは、会社内でももちろんメールのやりとりがありますし、お客様へもメールを打ったりして文章を作る機会がありました。

今は Instagramにもアカウントがあり、こちらでもキャプションをつけるので文章を作ります。

ただこちらも短い時間で伝えられるような内容を心がけます。

皆さんお忙しい時代。

家族や友達とのLINEなんかもあまり長文にならないようにします。

長い文章は好かれない…。

 

私自体は中くらいの分量から、しっかりと長さのある文章を綴るのは嫌いじゃないです。もちろん読むのも。

 

2.全然古くない、1967年の「卒業」

さてさて、映画でしたね。

 

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ラストの名シーン、花嫁を奪う主人公のベンジャミン

 

最近、2000年以前の映画を積極的に観ようと意気込んでいますが、今回は1967年のアメリカ映画「卒業」を鑑賞。

 

50年以上前の映画ですね。私のお父さんもまだ生まれていないです。

楽しめるかしら…と要らない心配をする、古い映画の経験が浅い私。

 

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いやいや、大変失礼な心配をしてしまったと恥ずかしい気持ちです。

すごく良い映画でした。

昔の映画ってもうちょっとシリアスかと思ってました。

けれど、声を出して笑ってしまうシーンもあって。

 

60年代の映画なのに全然古くない。

ファッションにしても、家具や装飾にしても。会話やストーリー自体も。

都会的にモダンに、洗練されています。

映画全体に気怠さは、クールな印象さえ与えます。

 

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ベンジャミンとミセス・ロビンソン

 

映画を観た後で記事を書くにあたり下調べのつもりでWikipediaを開き、この映画のことを調べると、

Rotten Tomatoesによれば、映画批評家の一致した見解が、

「音楽、演技、大学卒業後の倦怠感を的確に捉えた『卒業』の青春ストーリーは確かに時代を超えたものがある」

とのこと。

この一言が映画をよく表していて、私なりに大きく共感できます。

 

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自宅のプールに浮かび、気怠そうな主人公ベンジャミン

 

そういうものはどの時代も共通なのでしょうか。

 

私が大学を卒業したのは4年前。

当時は学校や親の保護や扶養から離れ、解き放たれたゆえの、道標のなさというか。

たしかに、行く道の不透明さ、これから自分の手で手がけていく生活への期待とも不安ともつかないような気持ち。

細い糸をくしゃっと丸めたような、もやもやした感情、そういう気持ちが胸の中にありました。

 

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最近の映画も大好きですが、古い映画ももっと観てみたい。

 

3.サイモン&ガーファンクル

ところで、劇中歌で大ヒットしたサイモン&ガーファンクルの「ザ・サウンド・オブ・サイレンス」に「ミセス・ロビンソン」。

最後にこれにも言及しなくてはいけませんね。

 

映画を観た後で、ドライブしながら私もよく聴いています。

「ミセス・ロビンソン」特に好きです。

ベンジャミンがエレーンを追いかけて、アルファロメオのアルファスパイダーを走らせるシーン。

ここで流れるのが特にコミカルで個人的に気に入りの場面。

 

アルファロメオのアルファスパイダー、かっこいいですよね。

これに関しては、カーセンサーの記事が分かりやすかったので、ご参照ください。

 

www.carsensor.net

 

Wikipediaの参考URLです。

 

ja.wikipedia.org

 

以上、今回はライトめに執筆しました。

それではまたです。

 

//映画 5.//1983年米国映画「フラッシュダンス」と1984年英国映画「リトルダンサー」/踊る友人たち

1.本当にとても良い、1984年公開のイギリス映画「リトルダンサー」

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日付を遡ったら、「リトルダンサー」を観たのは2017年の7月だった。

当時大学を卒業する年の夏の長期休みを利用してフレンチ料理を知りたいという理由で、オーベルジュに住み込みで働いていた。

卒論も退屈だったし、時間はいくらでもあるような年頃だった。

21歳の夏の始まり。

 

そのオーベルジュは海のごく近い山間にひっそりと佇む洋館で、広い庭にはドッグランがあった。

周囲には観光客向けの、洋風のレストランや土産屋、蕎麦屋や目立たない美術館があるだけ。

最寄りのコンビニまでも長い坂道をくだって行く必要があり、ちょっとした買い物にはオーナーの車を出してもらわねばならなかった。

 

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女の子たちに混じってバレエのレッスンを受けるビリー

 

私や、他のスタッフの女の子たちの暮らす部屋は屋根裏にあった。

部屋にはベッドが一つと、小さな冷蔵庫とテレビがついていた。エアコンもきちんと効いた。

オーナーは映画が好きで、洋館のプレイルームにも客が自由に観られるようにDVDをいくつか置いていた。

私が映画好きだということを知ると、休み時間にDVDを自由に観てもいいと言った。

勧めてくれた映画の一つが、「リトルダンサー」だった。

私はそのチャーミングな映画を、豊かな自然に囲まれたオーベルジュの屋根裏の自室で鑑賞した。

外では蝉がせわしなく鳴いていた。

 

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1984年、イギリスの炭坑町に住む「リトルダンサー」の主人公、少年ビリーは11歳。他の男の子たちと同じようにボクシングを習っている。ある日、ボクシングの練習場の半分を女の子たちのバレエ教室に貸すことに。ビリーは偶然目にしたバレエ教室に惹かれて、女の子たちに混じって練習するうちにバレエに熱中していく。

彼には才能がある。そして好きこそものの上手なれという言葉を体現しているかのように、練習を重ねるごとに彼のバレエの才能は光を放っていく。

 

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ビリー・エリオット役のジェイミー・ベルの美しい踊りに圧倒されたのを、今でもよく覚えている。

映画を初めて見たあと、「本当にとても良い」と、私はメモで短い感想を残していた。

オーベルジュでの仕事は、宿泊客の朝食の準備からディナーまで続く。そのうえ、オーナーの生まれたばかりの赤ちゃんの世話なんかも空き時間にしていた。

だからなのか。長い感想を綴っているような暇はなかったのかもしれない。

もしくは長い感想を述べられるだけの国語力のようなものを、21歳の女子大学生だった私は持ち合わせていなかったのかもしれない。

今も相当怪しいけれど…。

 

2.1983年公開のアメリカ映画「フラッシュダンス」

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「フラッシュダンス」を観たのはつい最近のことで、見つけるまではタイトルすら知らなかった。

2021年の8月の暑い午後。

ロックダウンは続いていたし、どこに出かけられるわけでもないので暇を持て余していた。

「フラッシュダンス」のタイトルは、Netflixのおすすめ欄に出てきた。

時間はあるし特に観ない理由もないので、朝飲んでいたコーヒーのカップを洗って、新しいものを淹れ直して、さあ観てみよう、ということになった。

 

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アレックス役のジェニファー・ビールズ

 

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「フラッシュダンス」を観たあとで、4年前にオーベルシュの屋根裏部屋で「リトルダンサー」を観たという、頼りない記憶力の尻尾を引っ張ってくることができたのは、ジェニファー・ビールズの圧倒的なダンスに引き込まれたからだろう。

バレエに恋焦がれる気持ちという一筋の光を頼りに踊る彼女のダンスが、ビリーという少年のそれと似ていた。

 

ジェニファー・ビールズ扮するアレックスの躍動から放たれるパワー。

または、画面に映る物語への吸引力。1980年代という時代の色彩。

映画を構成する、その微妙な一つ一つの要素が、私の中にある記憶の断片を呼ぶような感覚があった。

 

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名シーンのひとつ、ダンス中に水をかぶるアレックス

 

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二つの映画を比べると面白い。

「リトルダンサー」は2000年公開だが設定は1984年、「フラッシュダンス」は1983年に公開されている。

「リトルダンサー」はイギリスで作られ、「フラッシュダンス」はアメリカで作られた。

「リトルダンサー」は11歳の少年が主人公で、「フラッシュダンス」は18歳の少女が主人公。

 

「リトルダンサー」の少年ビリーも「フラッシュダンス」の少女アレックスもバレエダンスに惹かれ、憧れを抱いている。

そしてお互いに、ラストシーンでは自身のバレエを圧巻の演技力で披露してくれる。

 

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「フラッシュダンス」のラストシーン

3.踊る友人たち

けれども申し訳ないことに、私はバレエについて語れるほどの知識も経験もない。

ただ一方で幼少期に、私の周りにもわずかだがバレエを習っている友人というのがいた。

 

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一人は小学校に上がる前に出会った友人。

近所の同い年の女の子。

 

私たちはよくお互い家を行き来して遊んでいた。

それで何度かチケットをもらって、彼女が属していたバレエ教室の発表会を彼女を観に行った。

はっきりいえばあまりしっかり覚えていないけれど、お化粧をして、綺麗なバレエ服を着て、くるくると踊る彼女が羨ましくて、私もバレエをやってみたいと親にねだった記憶がある。

彼女は引っ越してしまったけれど、そのあと何年かは手紙のやりとりをした。

今何をしているかは分からない。

私はたぶん6歳か7歳くらいだった。そして彼女が友達として好きだった。

彼女は一人いた姉の影響を受けてか、子供ながらに大人っぽい雰囲気があった。背丈も私より高く、顔立ちもはっきりしていたからかもしれない。

バレエをやっていたことで、バレエ教室での生徒同士の関わり合いのなかでコミュニケーション能力を早期から身につけていたのかもしれない。

バレエのしなやかな動きを身につけていくに従い、実年齢よりも体の成長が早かったのかもしれない。

いずれにせよ、その大人っぽい友人のことはバレエとセットで覚えている。

 

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バレエではないけれど、社交ダンスを習っていた友人もいた。

小学校の高学年で私は、父親の転勤で県を跨いで引っ越をした。転校先の小学校で仲良くなった女の子が、その子だ。

彼女の社交ダンスの発表会にも行ったことがある。

社交ダンスの発表会というのは、コンサートホールで行うのではなくて、ホテルの宴会場のようなところで、それこそ社交パーティのような演出で行われる。

押入れの奥から、あまり着ない紺のワンピースを出してもらって、夕方に母親の運転するイプサムで家を出て夜のパーティが開催される会場に赴いた。

初めての社交的な場だったけれど、彼女の家族が私をテーブルに招いてくれて、一緒に食事をして、最後には彼女のおばあちゃんと一緒に踊りを踊った。

私はステップも分からなかったけれど、手を引かれるままに腰を揺らした。

 

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もう一人は高校時代に知り合った友人で、彼女も小学校に上がる前からバレエを習っていたと言った。

大学入試もあるし、勉強や部活で忙しいからもうバレエ教室は辞めてしまった、と言っていたけれど。

彼女の踊りは見たことがないけれど、姿勢がよくて所作が上品だった。

黒くて長い髪と、同じく黒い睫毛に縁取られたぱっちりとした目がチャーミングな友人だった。

彼女とも気が合って、よく一緒に帰ったり、放課後話し込んだりしていた。

 

最後の黒髪の彼女からは一週間ほど前に、結婚することになった、と連絡があった。

なんだか月日の流れは本当に早い。

当たり前だけれど、私たちはもう女子高校生ではなくなっている。

 

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3人とも何らかの理由で、よく一緒にいる友人たちだった。

年頃の悩みを打ち明けあったりもしたし、離れてからも手紙やLINEで繋がっていた。

 

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4年前に観た「リトルダンサー」とつい最近観た「フラッシュダンス」は、少女時代の記憶をこうして静かに呼んだ。

私のほんのささやかな、映画とバレエの話はこれでおしまい。

それでは、また。

//映画 4.//村上春樹原作「ドライブ・マイ・カー」を観る/北海道への旅路

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1.村上春樹を初めて読んだとき

「ドライブ・マイ・カー」、村上春樹原作が映画化ということで、

春樹好きの私はそのニュースを目にした時から、絶対観に行くと決めていた。

 

映画の元になった「女のいない男たち」が刊行されたのは、2014年。

私はその頃大学入試を間近に控えた高校3年生で、村上春樹は名前を知っている程度だった。

村上春樹好きの英語の教師がいて、よく授業中に春樹の話をしていたのは覚えている。

高校2年生の時に担任だった。

 

その教師はある日、「喪失感」とだけ黒板に書き、これが村上春樹の小説に一貫しているテーマだと話した。

眠たい午後の授業で、暑い教室には大きな扇風機が一台回っていた。

女子校で、周りのクラスメイトは流すともなく教師の話を聞き、その話はすぐに終わってしまった。

村上春樹を読んだことがある女子高生はあの教室にどれくらいいたんだろう。

何度か英語の授業の始まりのアイスブレイクで、その教師が村上春樹の話をすることがあった。

 

女子高校生だった私は「喪失感」がどのようなものか、たぶんほとんど理解できなかった。

今少し大人になって、少し長く生きて色々な痛みを覚えた後で、村上春樹の小説を実際に読むようになると、教師の言いたかったことが少し理解できる。気がする。

 

その教師はモスグリーンのコンパクトなオープンカーに乗っていて、よく喫煙所でタバコを吸っていた。結婚していたけれど、子供はいなかった。

 

**

 

大学に進学し何気なく受講した文学の講義で、「ノルウェイの森」が題材に扱われたことで、私は村上春樹の小説を読み始めた。

親世代と話した方がいいくらい、私の周りには村上春樹が好きという人間はいなかったような気がする。

けれど私にはその文体や物語の設定がとても新鮮で、すぐに気に入った。

大学生で時間を持て余していたから、何巻かに分かれた数作ある長編も、一度ではなく何度か読むことができた。

エッセイや短編集も図書館で借りてきて、大学の食堂や実家のベッドに寝っ転がってよく読んだ。

 

一方で、「ドライブ・マイ・カー」にたどり着いた時には、もうすでに大学を卒業していた。上京し、就職先のワイン商社で働き始めた頃だ。

忙しい仕事と仕事の合間に、休みと休みの合間に、途切れ途切れに読んでいたから、映画が放映されると知って読み返すまで、ストーリーは断片的にしか覚えていなかった。

 

2.「ドライブ・マイ・カー」を観に行く

映画のロードショーは8月20日(金)で、その一週間前に旦那さんを映画に誘った。

 

旦那さんは、放映当日の金曜日の夜に仕事が終わったら行こうか、と言った。

私は金曜日の夜に、ワインを開けてゆったりと過ごす時間を想像してしまうと、その提案を退け、土曜日ではどうかな、と提案した。

 

8月21日の土曜日の朝に、私たちは映画に行くことになった。

 

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最後に映画館を訪れたのは、「テネット」を観に出かけたときだ。

昨年9月18日にロードショーとなったその映画も、私は旦那さんと観に行った。

クリストファー・ノーラン好きの会社の同僚と映画の話をしているうちに、観たくなって。

慎ましい語彙力でその映画の感想を述べるなら、「すごかった」という一言に尽きる。

 

でも後日、「テネット」観に行ったよ、すごかった、とその同僚に話すと彼は、いいね、自分もNetflixで観られるようになったら観るよ、と言った。

映画館で観たから「すごかった」のに。

 

それでは最後に映画館で邦画を観たのは…

「マチネの終わりに」だ。

2019年11月に公開され、原作を読んだあとで観に行った。

 

懐かしい。どちらも秋の頃、観た映画たちだ。

 

3.北海道を走りたくなる

さて8月21日は雨降りの土曜日だった。

8月になって灼熱と言える山梨の夏を初めて過ごしていたのでその涼しい雨は束の間の、中休みのようだった。

 

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霧島れいか扮する主人公の妻、音と主人公とのベッドシーンから、映画はスタートする。

詩的なシーンだ。

けれど村上春樹をスクリーンで表現するというのは、なかなか難しいことなのかもしれない。どこか技巧的というか、作られたもののように思えた気もする。

 

前日に短編集「女のいない男たち」から「ドライブ・マイ・カー」のみ、予習と復習をかねて読んでいたから、大体のストーリーは頭に入っている。

一方で、映画本編は所々設定が違っていた。

「女のいない男たち」では表紙にもなっている、主人公の愛車が黄色ではなく赤だったり(*1)、死んだ妻、音の職業が女優ではなく脚本家だったり、舞台が東京ではなく広島(*2)だったり、なんだりかんだり。

(*1):記事を書いた後に調べたところ、監督が「赤の方が素敵やん」ってなったみたいです。参考まで。

(*2):こちらも執筆後確認したら、東京では車の走行シーンを自由に撮影できないとみたようで、当初韓国の釜山をロケ地に決めていたそうです。コロナで海外ロケが叶わず、広島になったとか。参考まで。

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さらに劇中のラストでは、原作では描かれていない、北海道への長距離運転のシーンを観ることができる。

 

北海道。

北海道と、村上春樹。

北海道と、ドライブ。

 

未知なるものとの出会いのような響きを含む、魅惑の取り合わせである。

 

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前述の通り、村上春樹の「風の音を聞け」を読んだとき私は大学2年生だった。

「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」と読み進めるうち、私は生涯一度も訪れたことのなかった北海道への旅券を買い求めるに至った。

二十歳になる直前の長い夏休みのことだった。

懐かしい。

当時、実家のある宮城県に住んでいたので、仙台港から苫小牧へ行けるフェリーに乗って、秋に片足入れた8月の終わりの北海道を訪れたのだった。

どうしてだろう、夏の終わりの北海道というのはもの寂しくも、心惹かれるものがあった。

今でもそう思う。

 

**

 

北海道上十二滝村。主人公の車(サーブ900)を運転する渡利みさき(三浦透子)の出身地という設定。

劇中ではメイン舞台となった広島から、北海道上十二滝村まで車を走らせるシーンが後半の見どころのひとつでもある。

雪の降り頻る、冬の日に。

 

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サーブ900を運転するドライバー渡利みさき役の三浦透子

映画で観たそのサーブ900はターボ車で、車としての最低限のもののみの機能を搭載したような車に見えた。

走る、止まる、曲がる。そういう基本的なことを、基本的な姿勢でそつなくこなす。

エンジン音はとびきり良い。エンジンをかけると唸り、車体が眠りから起き出す。そういう気持ちのいい雰囲気を感じるような音がなった。

 

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サーブ900と家福悠介役の西島秀俊、渡利みさき役の三浦透子

 

スクリーンの物語の中で赤のサーブ900は、広島から北海道までの片道約2,000kmを走り切ったわけだ。

 

往復で4,000km。

 

Googleマップで調べると、片道は丸1日とちょっとかかるらしい。

本州を出るときにフェリーに乗るだろうから、実際には片道で丸2日ほどかかっているはずだ。

 

我が家のホンダのストリームが、2006年製で13,000kmを走行しているけれど、にしてもほんの数日で4,000kmというとちょっとした数字だなぁと、映画を観終わった後も感心してしまった。

渡利みさきは私と同じくらいの年齢の設定だったはずだけれど、それくらいの年の女性が一人で運転するには、もう凄まじい距離だ。

 

**

 

冬の北海道と言えば、ある年の始まりに、網走を訪れたことがあった。

 

2月になればオホーツク海に流氷がやってくるのが見られたが、冬休みの関係でその時期は逃した。

特に何か目的があったわけではない。

旅行に関する書籍も用意せず、飛行機と電車と宿だけ取って赴いた。当時も仙台から札幌に飛び、たしか札幌から電車で網走に入った。

ただ静かに降る雪と凍ったオホーツク海を見て、宿で美味い海鮮の懐石を食べ日本酒を飲み、温泉に入って帰ってきた。

真冬に、その北海道の外れの町に行けば、何かが変わるか、もしくは何かが分かるようになるような気がしていた。

21歳になったばかりだったからかもしれない。

本州と北海道とを隔てる絶妙な距離感と季節のずれ感が、日々囚われている時間の感覚を麻痺させ、ものごとを違う視点から前向きに考えられることを、ひそかに期待していたのかもしれない。

 

真冬の網走を訪れてから、約4年が経った。

今でもなぜか村上春樹の作品に触れると北海道行きたくなる。

 

**

 

物静かな長距離運転好きが「ドライブ・マイ・カー」を観たならば、私と同じように黙々と長い距離を運転したい気分になるかもしれない。

劇中、主人公の家福とドライバーの渡利みさきも、車内ではほとんど会話を交わさない。

 

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4.後日談

そういえば、家に帰ってから、「女のいない男たち」の「ドライブ・マイ・カー」以外の物語も読み返しました。

映画では短編集に収録された物語の断片を、少しずつ反映させていたのですね。

 

あらすじは、公式サイトをご参考に。

 

dmc.bitters.co.jp

 

それでは、また。

 

//映画 3.//3日間映画日記/フランス映画3本鑑賞

はじめに

3日間フランス映画を1本ずつ、合計3本鑑賞したので日記をつけておきます。

 

フランスには、出張で一度だけ行ったことがあるきり。

すぐコロナが始まってしまい…。

映画を観ていて思うのは、落ち着いたらまた必ず訪れたい国の一つだなぁということ。

 

***

 

フランス映画は高校生の頃観た、「アメリ」が最初でした。

 

カラフルでかわいらしいのにブラック・ユーモアというか、

随所にピリッとスパイスも効いていて。

 

パリの街並みも美しくて、すっかり魅了されたのが、遡ること7年ほど昔。

 

それからジャン=ピエール・ジュネ監督の作品に惹かれ、

彼の、アメリ以降の作品で「ミックマック」と「天才スピヴェット」鑑賞。

オドレイ・トトゥが主演のものだと、「愛してる、愛してない」。

これはとても好きでした。

あまり書いちゃうと、ネタバレになりかねないので、

ぜひ本編ご覧くださいね。

 

ラブロマンスかと思いきや、

オッとなる展開もあってラストまであっという間に観られちゃいます。

オドレイ・トトゥのキャラクターって、

かわいらしく愛嬌があるのに、ミステリアスなところが、

フランス映画の全体的な世界観にとてもマッチしている気がする。

 

参考URL貼っておきます。

愛してる、愛してない... - Wikipedia

 

***

 

ところで展開がジェットコースターなハリウッド映画に比べ、

フランス映画って食感軽めで疲れない気がします。

扱うテーマはトーンが暗めだったりしますが。

 

ちなみに今回ご紹介する3本は、

1本目の「静かなふたり」が70分、

2本目の「17歳」が93分、

3本目の「向かい風」が91本と、

どれも1時間半あれば観られて、ちょうどいい。

 

ぜひ3本まとめてご賞味あれです。

 

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「静かなふたり」より、パリの街並み

 

1.静かなふたり

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ジョルジュとマヴィ、ジョルジュの営む本屋にて

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ジョルジュの愛車でドライブしたのち、パリを眺めるふたり

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◯ストーリー:

パリでの都会生活に馴染めない27歳のマヴィは、カルチェ・ラタンの小さな古書店で年老いた店主・ジョルジュと出会う。互いの孤独を共有した2人は年の差を越えて惹かれあい、静かだが情熱的な愛を交わす。だが、ジョルジュには謎めいた過去があった。

*U-NEXTより引用

 

◯メモ:

2017年に公開された、エリーズ・ジラール監督の作品。

エリーズ・ジラール監督は、女性監督なんですね。知らなかった。

作品も初めて観ました。

 

2010年に「ベルヴィル・トーキョー」でデビューしたのち、

最近では2020年に「5月の花嫁」という作品が日本公開されているみたいです。

この2作も観てみたいところ。

 

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劇中では、不器用で都会の生活に馴染めない主人公マヴィの初々しさが素敵です。

就職し上京したてだった頃の自分をなんとなく重ねてしまったり。

 

店主のジョルジュのもと、

パリの古本屋で働くようになってからは一人暮らしも始めます。

 

私がイチオシなのは、

引越しを終えたマヴィが壁の色を淡いグリーンのペンキで塗っているシーン。

 

ペンキで壁を塗るというのは、日本では非日常的な行為。

わぁ〜フランスっぽい〜と心躍る私。

 

ちなみに後に紹介する「向かい風」という作品でも、

古い住居のを新たな住まいとし、壁紙をラベンダー色に塗るシーンがあります。

 

フランスでは「引越し」と「壁を好きな色のペンキで塗る」という行為はセットなのでしょうか?

その辺りは詳しくないのですが、

数日かけ好みの色に塗り上げていく様子はこれからここで好きに暮らすんだ、

という意思の表れのようでもあり、憧れてしまいます。

 

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U-NEXTご利用の方は、

90日以内に配信終了予定ないみたいなので是非ご覧くださいね。

 

◯オフィシャルサイト:

映画「静かなふたり」オフィシャルサイト

 

ちなみにお金持ちなジョルジュに運転するのは、アウディA8。

車内でも静かなふたり…。

こちらの記事も面白いので、お車お好きな方はぜひ。

第157回:パリの年齢差カップルはA8の中で沈黙する 『静かなふたり』 【読んでますカー、観てますカー】 - webCG

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2.17歳

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イザベル役のマリーヌ・ヴァルトはモデル出身

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◯ストーリー:

パリの名門高校に通うイザベル(マリーヌ・ヴァクト)は、バカンス先で出会ったドイツ人青年との初体験を終え、数日後に17歳の誕生日を迎える。パリに戻ったイザベルは、SNSを通じてさまざまな男性との密会を重ねるようになっていた。そんなある日、ホテルのベッドの上で初老の男ジョルジュ(ヨハン・レイゼン)が発作を起こしそのまま帰らぬ人となってしまう。イザベルはその場から逃げ……。

*Yahoo!映画より引用

 

◯メモ:

本作で映画初主演となるモデルのマリーヌ・ヴァクトがとにかく綺麗。

鬼才のオゾン監督が「彼女の瞳の中に、うちなる世界と神秘を感じた」というだけあります。

作品の時系列は、夏のバカンスから始まり、秋へと移ろう。

季節感も今の時期と合い、なんとなく映画に入り込みやすかったです。

ただ取り扱っているテーマが中々にハードなので苦手な方もいらっしゃるかと。

 

一方で、普段着がジーンズとTシャツとぶかぶかのモッズコートなのに、

浮世離れしたような美しさをたっぷりと内に抱える、マリーヌ・ヴァクト。

彼女を観ているのがまず飽きません(個人的には)。

 

難しい主題ですがしっかり映画を観れたなら、

ラストが良い!ので、ぜひ楽しんでいただきたい一作です。

 

U-NEXTからでも、Netflixからでもいご覧いただけます。

 

◯参考サイト:

こちらのサイトが分かりやすいので、リンクを挿入しておきます。

MOVIE|少女のセクシュアリティに正面から向き合う『17歳』 - Web Magazine OPENERS(ウェブマガジン オウプナーズ)

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3.向かい風

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主人公ポールの妻役、オドレイ・トトゥ

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◯ストーリー:

妻が突然姿を消し、男は子供たちを連れて故郷へ戻った。やりきれない思いや後悔を抱え、前に進もうとあがき続ける。

まるで、強い向かい風に倒れまいとするように。

*Netflixより引用

 

◯メモ:

来ました、オドレイ・トトゥ出演の作品!

オドレイ・トトゥはあまり劇中には登場しませんが。

 

ただ失踪した妻役という配役が、なんとなくオドレイ・トトゥっぽい気がします。

 

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ポールの故郷はフランスのサンマロ。人口5万人の小さな港町。

ただ観光シーズンには、人口は4倍の20万人になるというから、フランスのバカンスシーズンは侮れない。

 

サンマロって昔美術館でポールシニャックが描いた「サンマロ港」という作品が目にとまり、どんな街だろうと思っていたことを思い出しました。

大航海時代から18世紀までは、フランス最大の港でもあったようです。

 

映画で観ると海風が強く、映画のトーンもあってか寂寥感の漂う土地に見えます。

 

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ポール・シニャックのサンマロ港、1930

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観光地として有名なサンマロ

 

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1本目と2本目の映画の舞台となるパリを離れ、3本目は海辺の町をゆったりと鑑賞。

子役の2人がチャーミングで、最後は涙を誘われました。

 

Netflixで観られます。

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以上、それではまた次回。

//映画 2.//最高の人生の見つけ方 The BUCKET LIST/南仏の夕暮れにキャビア×シャンパン

余命半年を宣告されたおじさまたちが、明るく人生を生き切るコメディ、

『The BUCKET LIST』。

邦訳は『最高の人生の見つけ方』。

 

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死を間近にし出会った友人同士は、

お互いそれぞれ問題を抱えているもののあっけらかんと余生を楽しみます。

死をテーマにしながらも、陰気にならないこの作品。

 

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その中から二人がお酒にご飯を楽しむシーンをひとつ見つけましたので、

一緒に味わってみましょう。

 

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ところで、

あなたが人生の最後に食べたいものはなんでしょうか?

 

1.Prologue あらすじ

【ワーナー公式】最高の人生の見つけ方より引用

 

勤勉実直な自動車整備工のカーター・チェンバーズと、大金持ちの豪腕実業家エドワード・コール。出会うはずのない二人が、人生の最後に病院の一室で出会った。

家族のために自分の夢を犠牲にして働いてきたカーター、そして、お金だけは腐るほどあるものの見舞い客は秘書だけというエドワード。お互いに人生の期限を言い渡されたという以外、共通点は何もない。

そんな二人を結びつけたのは、一枚のリスト――棺おけに入る前にやっておきたいことを書き出した “バケット(棺おけ)・リスト”だった。
「荘厳な景色を見る」「赤の他人に親切にする」「涙が出るほど笑う」……と、カーターは書いた。
「スカイダイビングをする」「ライオン狩りに行く」「世界一の美女にキスをする」……と、エドワードが付け加えた!
そうして始まった二人の生涯最後の冒険旅行。人生でやり残したことを叶えるために。棺おけに後悔を持ち込まないために。そして、最高の人生だったと心の底から微笑むために。
残された時間は6か月。でも、まだ決して遅くない――!

 

エドワード・コール役をジャック・ニコルソンが、カーター・チェンバーズ役をモーガン・フリーマンが演じる。

 

 

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2.Scene 南仏の夕暮れにキャビア×シャンパン

前述の通り、余命半年を宣告されたおじさまお二人は(二人は同じ病室で出会った)、 

延命治療をせず、家族の反対も押し除け、退院。

死ぬ前にやりたいことリスト(Bucket list)をもとに世界を飛び回り、

さまざまなアクティビティを楽しみます。

 

VIPでゴージャスな実業家エドワードの自家用ジェットでアメリカを飛び立ち、

到着したのは南フランス。

コミカルな南の音楽とともにおしゃれな街並みが映し出されたのち、

シーンは二人の、夕暮れどきの会食へ。

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南仏コート・ダジュールのヴィルフランシュ・シュル・メールのレストランで、

食事を楽しむ二人

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「キャビアのとり方を知っているかい?(You know how they harvest caviar?)」と、

カーター。

間髪入れず、

「教えてくれ(Hit me.)」とエドワードが応える。

 

カーターは話しだす。

手にはキャビアが乗ったブリニ(ロシア風の小さなパンケーキ)。

 

「漁師はメスのチョウザメを捕まえたら、 漁師は細心の注意をはらってチョウザメが心安らかに死ぬのを見守る(When a female sturgeon is caught...the fisherman has to take great care to see she dies peacefully.)」

 

ふむふむ、とエドワード。手には、こちらもチョウザメの卵を乗せたブリニ。

 

「少しでも脅すと卵を台無しにする酸を出す(If she feels the least bit threatened...she secretes a sour chemical that ruins the eggs.)」

と、カーター。

 

エドワードは、

「まるで俺の3番目の女房みたいだな(Sounds like my third wife.)」と、

キャビアを口に運び、咀嚼しながら頷く。

カーターは笑う。そしてシャンパングラスに手を取る。

 

ここでもういっちょ、

「マヨネーズは樹液だと言ってた(Woman thought mayonnaise came from a plant.)」とエドワード。

カーターは笑いながら、シャンパンにひとくち。

「止まらんな(I could get used to this.)」とカーター。

 

すかさず、

「それも3番目が言ってた(Also sounds like my third wife.)」とエドワード。

カーターはうんうん、頷き微笑む。

エドワードはシャンパンをひとくち飲む。

そして視線を外の景色へ移す。

 

カメラもエドワードの視線を追って窓の外へ。

シーンは夕焼けに染まるコート・ダジュールの海を捉える。

橙色から薄紫、そして深い紺色に。

暮れゆく空と穏やかな海のコントラストが美しいカット。

 

エドワードは、

「ここは30年通ってるが、男連れは初めてだ(Thirty years I've been coming here. First time with a guy.)」

と一言。

「おや、光栄だね(Well, I'm flattered.)」と、カーター。

カーターは手を広げ、いかにも光栄だというような仕草をする。 

 

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1分か2分ほどのこのシーン。

終始リズムがいい。

エドワードの性格もよく出ている。

人懐っこく、ユーモア。少々ナルシスト。

 

そして、キャビア×シャンパンのシーンは、このあと更なる展開を見せることになる。

が、この記事では食事のシーンまで。

 

3.Epilogue ところで

 

私は学生の頃にいっとき、オーベルジュで住み込みで働いていて、

キャビアと一緒に小さなパンケーキを出していました。

サワークリームなんかも添えて。

キャビアのしょっぱさとサワークリームのまろやかさ。

ふわっとしたパンケーキに両方をのせ口へ入れると、

なんとも調和の取れた味わいになるのです。

懐かしい。 

 

そして、キャビアといえばシャンパンですよね。

劇中の二人は、細長く美しいラッパ型のシャンパングラスを片手に、

過ぎゆく1日を思い、キャビアを乗せたパンケーキを頬張っています。

 

それはそれは、カーターのいう通り"I could get used to this."、

やめられないとまらない〜状態でしょうね。いいなぁ。


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それにしてもモーガン・フリーマンの、ブラウン調のおしゃれなスーツ。

彼にとてもよく似合っていますよね。

シルクの、ブラウンのネクタイもまた渋くていい。

 

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4.End まとめ

最後に、このディナーの舞台になった、

南フランスのヴィルフランシュ・シュル・メールについて。

海外旅行もなかなかできないことだし、名作の舞台を下調べしておいて、

アフター・コロナの楽しみとしておきましょう。

 

さてここからは、ヴィルフランシュ=シュル=メール - Wikipediaより引用です。

*()は私の勝手なコメントです。

 

ヴィルフランシュ=シュル=メールは、ニースのおよそ6km東にあり、

モン・ボロン、モンタルバン、モン・ヴィネグリエらの山地に遮られている。

 

湾は地中海にある港湾の中でも、有数の深さがある天然港である(近代に入ってからは技術の著しい向上によって、天然の地形に恵まれない場所でも大規模な港が造られるようになりました。ヴィルフランシュは天然港ということで、歴史ある港でもあります)。

ニース岬とフェラ岬の間は水深95mに達し、大型船舶の安全な停泊地を提供している(水深が深いということは大きな客船も泊まれるということで、古くから観光業も栄えているのも頷けます)。

ヴィルフランシュ市街は、湾を囲む丘陵へ向かって伸びる。

 

ヴィルフランシュの街は地中海を見下ろすテラスのような丘の上にある。

旧市街は、曲がりくねった石畳の小路と、自動車の乗り入れが制限された路地とで込み入った迷宮のようである。

そこにプロムナード・ド・マリニエール(船乗りの遊歩道)が湾の北側を仕切る海岸通り沿いに伸びる。

 

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旧市街地と砂浜

 

どっしりとした壁で覆われた砦は海へせり出した一画にあり、1557年にサヴォイア公エマヌエーレ・フィリベルトによって建設された。

 

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ヴィルフランシュ・シュル・メールの位置

 

いつか行ってみたい。

それでは。